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2013年1月 3日 (木)

 『道―白磁の人―』

文学と映画行ったり来たり 第24回、『道―白磁の人―』
朝鮮に慕われた日本人

 最近は獨島=竹島の領有権問題で日韓関係も微妙だが、インターネットなどで若い人の意見を見ると、日韓ともにけっこう冷静な意見を持った人々がいてホットする。
 こういった過去とは違う現在の情況というのも、先人の功績に基づいているのだろうし、彼らを今の私たちに知らしめてくれる文学のおかげだと信じている。
 映画「道―白磁の人―」は浅川巧の半生を描いたドラマ。ヒットしたという噂は聞いていないが、すごく良かった。Photo_2
 浅川巧は1891年1月、山梨県北杜市に生まれた実在の人物。兄・伯教を慕って植民地統治下の朝鮮へ渡った。伯教は朝鮮磁器の美を愛し、民芸運動で著名な柳宗悦らとともに、朝鮮民族美術館を創設した人として知られる。巧は朝鮮総督府農商工部山林課林業試験所に就職して、植林活動に力を注いだ人だが、兄にならって朝鮮の民俗芸術にも詳しく、朝鮮に対する日本帝国主義の不当な支配に反対し続けた人として知られる。
 映画では、この浅川巧を吉沢悠が演じた。林業試験所での朝鮮人同僚青林(チョンリム)を韓流ドラマ「朱蒙」や「トンイ」に出演した人気俳優ペ・スビンが好演している。朝鮮に赴任した巧は青林に朝鮮語を学び、朝鮮の山々を歩き、朝鮮人の生活に入って行く。次第に彼は日本人の朝鮮人支配に憤りを感じるようになる。朝鮮人の民族衣装を着て街を歩き、軍人に殴打されたりする。巧は青林との友情を深めていくが、独立を志向する朝鮮人たちと、人道主義の巧らとの溝は浅くない。
 死の床についた巧は、刑務所に収監された青林に会いに行く。
 監督は高橋伴明。高橋恵子の夫としてしか知らなかったが、これまでの不明を恥じる。
 吉沢悠、ペ・スビンのほか、林業試験所の上司に強面の田中要次、優しく厳しいが、朝鮮人を差別する母に手塚理美が扮した。彼らは一般的な日本人の姿を典型化している。
 柳宗悦役に二股で話題の塩谷瞬。塩谷は「パッチギ!」の主演で名を上げたが、「パッチギ!」の出演者は沢尻エリカといい、高岡蒼佑といい、騒がせる奴が多い。ケンドー・コバヤシや小出恵介も出演していた。
 吉沢悠はNHKの「平清盛」で公家の藤原成親役をやった人だが、これとはだいぶイメージが異なる。まじめな感じか。
 ところで、石原慎太郎なみの威勢の良い放言に踊らされることなく、近代日本と朝鮮の関係を冷静に考えたいなら、趙景達『近代朝鮮と日本』(岩波新書)がある。この本は韓国のテレビドラマのような、歴史的事実を無視した極端に「反日」に走ることがない。歴史家としてまじめに分かりやすく、事実を追いかけた解説書で好著。植民地朝鮮に渡った日本人について知りたければ、高崎宗司『植民地朝鮮の日本人』(岩波新書)を最初に読めば良い。
 最近は侵略戦争の英雄たちや、宮本武蔵のような人殺しばかりが称賛されるが、浅川巧のような人こそ、日本人が誇りに思うべきだ。浅川巧は朝鮮の人々に愛され、その墓はソウル郊外の共同墓地にある。墓碑銘には「韓国の山と民芸を愛し,韓国人の心のなかに生きた日本人,ここ韓国の土になる」と刻まれているそうだ。こういう日本人が少ないことを私は恥ずかしく思う。

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